「産学官共同研究」とは、民間企業(産業界側)と大学(学)や研究所(官庁)が連携して、共通の研究課題を対等の立場で研究することです。

産学官共同研究とは?

床下用調湿木炭炭八

十数年前まで、大学では研究で得た成果や情報を産業界に積極的に出していくことは、あまりありませんでした。  しかし、大学への公的資金を税金でまかなっていることなどから、費用対効果を求められる時代となり、近年は大学での研究成果を積極的に利用し、産業界と連携して経済効果を出すことにより、法人税として還元できるようにと、国の方針が1998年に出されています。  

※産学官共同研究での成功事例は、大手企業を除く中小企業では非常に少ないのが現実です。

島根大学
地域共同研究センター
教授 北村寿宏先生

石崎炭素研究所
石崎信男先生

出雲土建㈱では、公共事業が縮小していく中で、2001年から新事業として出雲カーボン㈱と共同で環境部門への新たな進出として「炭八」という「床下調湿木炭」「天井調湿木炭」の開発を行ってきました。

 そして、その開発は事業開始当初から「島根大学との共同研究ありき」の前提条件で行ってきた結果により、順調に売上げが伸びてきました。

もちろん、開始当初からの十年間は、山あり谷ありでしたが、「炭八」事業を絶対に成功させようという情熱を持たれた多くの研究者のおかげで、産学官共同研究の成果が出始め、成功したと言える段階にきたと思います。

2005年6月には第5回中国地域産学官コラボレーション会議における「産学官連携功労者表彰」を受賞しました。

淺沼写真

出雲土建㈱
環境研究室
淺沼 友光

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元島根大学総合
理工学部教授

現東京学芸大学
教育学部准教授
大谷 忠先生

2001年に「炭八」事業をスタートした頃、調湿木炭と言われる木炭は、全国で何百社ものメーカーで製造されていました。
 しかし、その中で1社としてその調湿する能力と、なぜ床下が乾くのかを科学的に説明できるメーカーはありませんでした。
 出雲土建、出雲カーボンでは産学官共同研究で、まず最初に木炭「炭八」の湿気を吸ったり吐いたりする調湿能力が高く、なおかつ製品の品質が一定になるような製造条件の確立を目指しました。
次にその「炭八」を、既存の湿気に困っている戸建住宅に敷設し、床下の湿気が除湿されることを実証しました。
 木炭「炭八」でなぜ床下が乾燥するのか?というメカニズムを産学官共同研究により、全国で初めて実証し、「目に見える化」に成功しました。
この結果は、木材学会で発表されました。

■第53回日本木材学会福岡大会

■第16回日本木材学会中国・四国支部大会

■第55回日本木材学会京都大会

製品の信用度を高めるため、現在でも研究は継続しています。

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島根大学総合理工学部
中井毅尚先生

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床下測定状況

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炭が入っている天井

測定状況
(出雲市内マンション)

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測定状況
(松江市内マンション)

調湿について
 島根大学との産学共同研究で開発・製造した木炭を用いて、モニター住宅により床下に木炭を敷設した場合の環境変化を調査し、床下の湿度の低下・床下木材の含水率の低下など木炭の敷設効果を明確にしました。
 この研究は日本建築学会(関東)2006で発表されています。


■日本建築学会(関東)2006
 

 

消臭について
 炭八を天井裏に敷設し、天井を孔空きボードにすると天井裏の炭八がホルムアルデヒドやトルエンなどの科学性物質濃度を低減させることがわかりました。
 また、靴箱に炭八を使用すると靴箱内の臭気レベルが減少する事が実証されました。
 これらにより、炭に消臭効果があることが解明されました。この研究は空気調和・衛生工学会2009で発表されています。

 ■空気調和・衛生工学会2009



節電について
 島根大学との共同研究で、出雲市内と松江市内の鉄筋コンクリート造マンションにおいて天井裏に「炭八がある部屋」と「炭八がない部屋」を使って、冷房または暖房(エアコン)した際の消費電力について研究を行った結果、「炭八がある部屋」の方が「炭八がない部屋」と比べて冷房で24%、暖房で11%節電できることがわかりました。

 

◆冷房の消費電力24%削減!

 断熱・蓄熱効果によりエアコン(冷房)の消費電力を平均で24%削減でき、特に、気温が上昇している昼間は約30%の削減できることがわかりました。(測定期間:2011年6月〜8月)

 ■冷房の節電結果の詳細

 また、この結果については、NHK全国ニュースでも取り上げられ、放映内容はNHKの環境情報専門の動画サイト「エコチャンネル」でご覧いただけます。
 ■NHKエコチャンネル
  木炭利用の住宅 節電効果は

 ■日本木材学会中国・四国支部2011
 ■2011年9月8日 朝日新聞
 ■2011年9月13日 住宅新報

 

◆暖房の消費電力11%削減!

 断熱・蓄熱効果によりエアコン(暖房)の消費電力を平均で11%削減でき、エアコン(暖房)を停止した後も、温度・湿度とも高く、暖かいことがわかりました。(測定期間:2012年1月〜2月)

 ■暖房の節電結果の詳細

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島根大学総合理工学部
中尾哲也先生

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重量床衝撃音発生器
(バングマシン)

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下階測定状況

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特別評価方法認定書
(大臣認定)

近年、マンションやアパートで騒音で困っておられる入居者は約6割にのぼっています。

 隣や上下階の音は気になっても、自分の家の音が隣や上下階には騒音となっていることが分らないケースが多いようです。

 特に苦情になりやすいのが、子どもが飛び跳ねた際に発生する「ドスン」という低い衝撃音(重量床衝撃音)です。
 2008年には、「炭八」を天井裏に敷き詰めると、上階で発生した重量床衝撃音63Hz帯域を、約4〜5デシベル減らすことがわかりました。

 
 ■2008年8月1日 毎日新聞

 ■2008年8月2日 日本経済新聞

 ■2008年8月2日 産経新聞

 ■日本音響学会2009年春季研究発表会

 

重量床衝撃音対策として、
国土交通大臣の特別評価方法の認定の取得!

 2012年6月には、「炭八」が入った天井も含めた床構造で、住宅性能評価4等級と同等の性能であることが認められ、「天井裏に木炭を敷設したコンクリート系構造の階床の遮音構造に応じて評価する方法」として国交大臣の特別評価方法の認定を受けました。

 これまでは、重量床衝撃音対策として、上下階の間のコンクリートスラブを厚くする方法しかなく、何かの素材を挟んで低減させることは難しいとされており、重量床衝撃音の中でも特に低減させるのが難しいといわれている重量床衝撃音63Hz帯域が、天井裏に「炭八」を敷くと8.1dB〜11.7dB程度低減できることが証明されました。

 この低減量は、スラブ厚さ3cm相当し、これまで遮音対策のためにスラブ厚さを18cmとしていたものが15cmにすることができ、建物の軽量化、コスト削減に大いに期待されます。

 ■2012年6月26日 住宅新報

 ■2012年6月27日 建設工業新聞

 従来品の調湿木炭が入っている袋は、目が粗く、炭の粉が漏れて利用する際に汚れてしまうという問題がありました。
また、木炭チップの大きさもどれ位が適当なのかもわかりませんでした。そこで、粉が漏れにくくて調湿しやすい不織布と、適正な木炭の粉状を発見し、「床下調湿材」として特許を出願し、2006年2月10日に特許を取得しました。
特許3768498号
発明の名称 床下調湿材
病気イラスト

湿った床下を除湿することができる調湿能力の高い「炭八」ができあがった2002年5月にモニター336戸の戸建住宅の床下(8畳1間)に「炭八」を無料で敷設していただき、敷設後1ヵ月後、半年後、1年後にアンケートにお答えいただきました。
 その結果、ほとんどのお宅で除湿効果が現れ、カビがなくなるなど多くの人に喜んでいただきました。

■モニターアンケート結果

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アンケートの結果から、下記のキーワードで新たな共同研究の挑戦が始まりました。 キーワードは

  1. アトピー性皮膚炎
  2. ぜん息
  3. カビ
  4. ダニ
  5. シロアリ

炭八-高鳥先生

NPO法人カビ相談センター
代表 高島浩介先生

アトピー性皮膚炎・ぜん息などの病気にはアレルゲン(原因物質)であるカビやダニを居住空間から少なくさせることが大きな改善ポイントであることが知られていました。
そこで、「炭八」を床下や天井に入れることで、炭を入れる前と後でどう変化するかを研究しました。結果、炭八を入れるとカビやダニ、ハウスダストが減少することがわかりました。
カビの研究は、キトラ古墳、高松古墳のカビ問題の研究者である前国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部長、現NPO法人カビ相談センター 代表 高鳥浩介先生にご協力いただきました。

■第36回日本防菌・防黴学会

炭八-医大

島根大学医学部

ダニやカビが「炭八」で少なくなることがわかったので、アトピー性皮膚炎の症状が改善できるのでは考え、知り合いのアトピー性皮膚炎やぜん息の患者さん約10人の自宅の床下や室内に「炭八」を入れていただいたところ、現象的に症状の改善が見られました。そこで、「炭八」の敷設によるカビ、ダニの減少と症状の改善についての因果関係を検証するために、島根大学医学部皮膚科との共同研究を開始しました。

 その結果、現象的に6人中5人の患者さんの症状に改善が見られ、炭八を床下や天井、室内で利用することで、アトピー性皮膚炎の症状が緩和できる可能性があることがわかりました。その結果は、2005年7月に日本皮膚アレルギー学会で発表されました。

■第35回日本皮膚アレルギー学会 

■2006年6月22日 産経新聞

2005年7月17日 パシフィコ横浜にて

アレルギー学会

島根大学医学部皮膚科
教授 森田栄伸先生

森田先生

天井に敷き詰められた炭八

天井の炭八

アトピー性皮膚炎の患者さん宅の床下やベッド、マットレスの下や室内に置くなど試みましたが、寝室が2階の部屋の患者さんもいらっしゃったことから、天井裏に「炭八」を入れることを思いつき、3人の患者さんのご自宅で試験的に試してみました。  その結果、症状の改善が見られたことから、健康に暮らせる住まいづくりには「炭八」が欠かせないと思い、自社ブランドである賃貸マンション「炭の家」が生まれました。

炭八-竹谷先生

島根大学医学部小児科
竹谷 健先生

島根大学医学部小児科との共同研究
 アトピー性皮膚炎の共同研究の結果、大人の方も対象となっており、炭八を入れたという安心感や気持ちがよくなったという精神的な影響も考えられることから、薬でも改善が見られない重症であった小児気管支ぜん息患者7人を対象に新たに医学部小児科との共同研究を行いました。
 患者さんのご自宅の床下や天井裏、ベッドの下などに炭八を入れたところ、7人中6人の改善が見られました。共同研究では、炭八を入れる前の居住空間のカビの胞子量などを調査し、炭を入れた後、半年後、1年後のカビ胞子量の減少と症状改善とが医学的な観点からも可能性があることがわかりました。

 島根大学医学部との共同研究で、アトピー性皮膚炎や小児気管支ぜん息は生まれつきのアレルギー体質の方であることを知り、そういった体質の方がアルミサッシやビニールクロスで覆われたようなカビやダニが発生しやすい高気密な住居環境で生活すると、症状が悪化すると考えるようになりました。
 また、高気密の弊害により、冷暖房に頼りすぎ、室内が夏も冬も乾燥しすぎてしまい、アトピー体質にとって最悪な状態である角質の乾燥を促進させていることもわかってきました。

 出雲土建では、1996年から建築部門の新たな事業として賃貸マンションの提案営業を始め、1998年にローコスト鉄筋コンクリート造マンションの施工ノウハウのシステムを購入し、1999年、2001年にそれぞれ1棟建設しました。 入居者アンケートの中で、室内の結露、カビなどの「湿害」の問題が発生していることがわかり、施工業者として頭を悩ませていました。そこに、共同研究により天井用の「炭八」により「湿害」が解決できることがわかり、2004年に“体にやさしい「炭の家」”と命名した賃貸マンション事業を本格的に営業展開を開始しました。

島根大学医学部との共同研究の過程で発明された「木炭(炭八)による防音調湿工法」の特徴は次の3点です。

一般的に使用されている通気性の少ない天井ボードの代わりに穴あきボード(音楽教室や昔の病院に使われていたもの)を貼り、室内と天井裏との通気性をとっている。天井ボードのすぐ上には、天井用の「炭八」(1袋15リットル、約2kg)を1㎡当たり約6袋をぎっしり敷き詰めている。
天井裏と屋外の壁に通気口を設け、梅雨時期の室内や台所などから発生する水分を天井ボードの穴を通して「炭八」が吸着し、その湿気を天井裏から屋外へと出す自然換気システム工法。

この工法は2010年7月16日に特許として登録されました。
特許4550609号
発明の名称 防音調湿天井構造

プランドール

天井裏に「炭八」を入れた賃貸マンション「炭の家」は「快適で健康に暮らせる住環境」が入居者に人気が高く、入居待ちができるほどの物件もあります。
 2004年12月「炭の家」第1棟目「カサ デ カルボン」(スペイン語で炭の家)が完成し、6年経過した2011年3月現在26棟426戸を引渡しさせていただきました。
 その426戸には約1,000人の入居者の方々に住んでいただいており、出雲市の賃貸アパート・マンションのうち約3.4%を占めるほどになりました。
■2009年11月27日 日本経済新聞